論文捏造を読む
先日The Moonを見るで以下の文を書いた。
「月着陸はヤラセだ」とかいろいろ意見があるけど、たとえ嘘だとしても夢(イリュージョン)をみせてくれただけで大満足だ。
研究支援を仕事にしている人間として、簡単に言ってはいけない発言だった。一方で「研究不正はいけない。」といい、一方では「嘘でも面白ければよい。」という。自分の中にダブルスタンダードがあることを認識した。以後気をつけよう。
今のところ、私は論文捏造に関して責任を持つのは大学・研究所だと考えている。
私が考える論文偽装についての問題・対策案は以下の通り。
- 状況:論文の中に偽装されているデータと正しいデータがある。正しいデータだけを集めたい。
(赤いボールだけを作りたいのに赤白2色のボールが作られてしまう。)
- 課題:正しいデータと偽装されているデータは見分けがつかない。
(完成品の赤白2色のボールは外見からほとんど見分けがつかない。)
- 対策案:偽造データを取り除こう。
(白ボールを取り除こう。)
- 手段案:1.偽造の定義(たとえば、実験をした形跡がないときは偽造とする。など)を明確にする。
2.定義に当てはまるか(y/n)を判断し偽造の判断をする。
3.偽造と判断された論文には大学がエラータムの様なものを出す。
(赤白2色のボールは製造ラインが違う。白ボール製造ラインから作られたボールを回収しよう。)
「内部告発の難しさ」、「研究の自由の確保」、「偽造判断の難しさ」、「再現性」など色々議論があるかもしれないが、機械的に定義に当てはまるか否かで偽造判断すればいいと思う。
この方法ならデータの正否を判断する訳ではないので、「研究の自由の確保」、「偽造判断の難しさ」、「再現性」問題は解決する。
また、大学が主体的にチェックすることで「内部告発の難しさ」も解決するのではないだろうか。
と、簡単に書いたけど素直に解決する課題ではないので、運用方法(howの部分)をもう少し考えよう。
以下、本を読んで気になった文章の抜粋。
- p5,科学的な不正を犯したことのあるバイオ分野の研究者についてのアンケート、調査結果内訳
データの捏造・加工:0.3%
アイデアの盗用:1.4%
論文の多重投稿(複数の科学雑誌に同じ内容の論文を投稿すること):4.7%
矛盾するデータの隠蔽:6.0%
資金提供者からの圧力による研究方法・結果の変更:15.5%
(2005年 ネイチャー アメリカの財団*1)
- p68, 企業秘密
実験のノウハウが企業秘密になっている
- p98,確証バイアス
- p134,Nature 編集チーフの言葉
私たちは警察ではありません。論文のひとつひとつを、不正ではないかと疑いの目で見てすべて調べることなど、実際にはできません。私たちの責任の範囲ではないと思います
..(略)広報活動や不正行為の問題についての議論などを通じて科学者の意識を向上させることならばできると思います。しかし、不正行為をとめられるような仕組みなど、私たちには想像すらできません。
- p279,「間違い」への寛容
科学には、研究者が意図して犯したわけではない「間違い」や「ミス」といったものは付き物
- p282,不正を立証する困難
不正論文はやがて、科学の現場から自然にその存在が忘れ去られていくものである、そう達観している科学者が多いのも、また事実である。
- p288, 狭い専門領域
実験上の細やかなノウハウを知っていないと、研究にならないからである。そうしたノウハウを見出した研究者に対して、他の科学者は深い敬意を払うものである。
同じメディア業界で働く人だからなのか、ジャーナル(Nature、Science)の項は批判色が強い気がする。
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*1:後で原著にあたり調査方法をみること