研究者による論文不正防止策の提案をしてみた

2009-02-13の日記論文捏造を読むで論文不正防止策の基本アイデアについて書いたのだが、その後、考えをブラシュアップしある研究機関に論文不正防止策の提案をしていた。提案内容の概略は「研究の品質チェック*1しましょう。」というもの。もちろん研究推進を邪魔しない仕組みであること大前提である。


提案先の研究機関は論文不正を引き起こしたことがあるところなので、危機感が強いと思っていたのだが、驚いたことにこんな発言が。

研究者は不正しないんだよ!


・・・ふむ。まぁ、確かに悪意を持って不正する人の数は多くないでしょう。研究不正があったことが明確に示された論文の絶対数も少ないかもしれない*2。でも何を根拠に不正しないと?ハインリッヒの法則*3あてはめて考えるとその陰には数千の異常があったと考えて当然なのだ。


大学等が独立行政法人化され国から財源依存を下げよう求められている今、不正の有無にかかわらず「結果(特許、論文など)は品質チェックされてます」という姿勢を外部(特許購入者、受託研究依頼者など)に示すことが重要だと思うんだけどなぁ。


企業不正をみればわかると思うが、同じ不正でも内部で検知して対処するのと、外部から発覚して対処するのでは、時間、費用、労力とも雲泥の差なのだ。なので、不正の対処方法としては、組織内部に不正を検知し予防する仕組みを作ることがとっても重要なのである。万一不正検知できないのだとしたら作った仕組みが悪いから*4であって、野放図の結果の不正とは全く意味が違うのだ。


◆今回の反省
「自由な研究の確保と研究結果の品質保証」という切り口で説明したつもりだったんだけど、「論文不正防止」が強く意識に残ってしまったようなだ。次回以降話し方気をつけよう。また品質確保する理由として「社会への説明責任」だとその大きすぎてまったく現実感がないので、大学/研究機関は規模、金額ともに上場企業並みの影響力を持っていることを明確に示す工夫もしよう。


もしこの記事を読んでいる人の中に、研究品質に興味をお持ちの大学・研究機関のかたがいたら、お気軽にinfo@sesame.selfip.net]までご連絡もらえるとうれしいです★

*1:価値のチェックは論文投稿時にレフリーに審査されているので、あくまで品質のチェック。品質確保されている研究とは、作業過程記録が残っていること、複眼チェックが行われていること等

*2:参考:http://www7a.biglobe.ne.jp/~haklak/Column/226Column/v226_paper07.htm

*3:1つの重大事故の裏側には、29の軽微な事故があり、その裏側には300の何らかの異常が存在していたという経験則

*4:だからPDCAサイクルを回して常に改善していく。